ひらがな法話hirahou
ご先祖さま えん罪事件
よく、「ご先祖を大切にする」といわれますが、私たちは本当にご先祖を大切にしているのでしょうか。残念ながら、「大切にしている」のではなく、「大切にするフリをしている」ような気がします。
なぜなら、先祖を大切にすることが「目的」になっていないからです。先祖を大切にする事が目的なら、それで終わればいいのです。ところが、それで終わらない…。
『ご先祖を大切にしておけば、悪い事は起こらない』
とか、
『ご先祖の供養をすれば、病気が治る、お金がもうかる』
という言葉のように、先祖を大切にした後に、自分が幸せになることをくっつけてしまいます。
これでは、病気が治ることや、お金がもうかることが目的です。先祖を大切にするのは、「目的」ではなく、自分が幸せになるための「手段」「道具」となっていませんか。≪大切にする≫どころか、≪利用する≫わけです。
そして、病気や不幸な出来事に出会うと、 『自分が無理をした』とか、『方法が悪かった』、と反省することをしないで、
『先祖の供養が足りなかったから、ご先祖がタタったのだ』と、ご先祖を≪悪者≫にして、すませようとします。
これでは、ご先祖さまがあまりにもお気の毒です。自分は何もしていないのに、無実の罪、濡れ衣を着せられるわけですもの。最近よく耳にする言葉で言えば、≪えん罪≫です。(少なくとも、私がご先祖なら、可愛い子孫を護ることはあっても、タタルことはしません。)
都合のいい時には、『先祖を大切に…』と利用して、都合が悪くなると、『先祖がタタる…』と言って、≪悪者≫にするわけです。利用したり、悪者にしたり、本当に身勝手で、先祖に失礼なことです。
法事や葬式などの行事は、先祖の心配をしたり、安心させてあげるためのものではありません。先祖の心配をするのではなく、反対に心配をかけるような、身勝手で危なっかしい生き方をしていないかと『私の今』を訪ねさせていただく行事でありたいものです。