ひらがな法話hirahou
そんな罪とは つゆ知らず
ある時、一人の若者が老僧に、
「俺は今まで、悪いことをしたことはない」 と言いました。
すると、老僧は若者に 言いつけます。
「バケツに一杯になるほどの小石を集めてくるように…」と。
若者は、庭じゅうから、小石を集めました。
さらに老僧は、
「このバケツ一杯分と同じ位の重さの大きな石を一つもってきなさい」
と言いました。若者は庭の端から大きな石を運んできました。
そして今度は
「よし、では その大きな石をもとの場所へ戻してきなさい」
いいます。若者はしぶしぶ石を元の場所へ返しました。
つづけて 老僧は命じます。
「では、このバケツの中の石を みんなそれぞれ、元の場所へ戻して来なさい」
と。これには さすがの若者も黙っていられません。
「この小石のあった場所を いちいち覚えてなんかいませんよ。元に戻すことなどできません。」
すると、老僧がいいました。
「お前の犯してきた罪も同じである。警察のお世話になるほどの大きな罪なら、忘れもしまい。
しかし、バケツの小石のように小さな罪を重ねてきたことは身に覚えがないものである。
バケツの小石でも集めれば、大きな石と同じ重さになるように、お前が気付かずに犯してきた罪は とても重たいものである。」と
さて、ここで 質問です。
[A]罪の重さを「知らずに犯した罪」
[B]罪の重さを「知った上で犯した罪」
どちらの方が 刑罰が重いでしょうか?
もちろん、知った上で犯した場合が 重い罪となります。ただし、それは法律や道徳に照らしたときの場合です。
しかし、仏さまの教えに照らしたなら、「知らずに犯した罪」の方が重罪です。
なぜなら、「知った上で犯した罪」は犯した時点で罪の重さに気付き、自分の悪業を自覚しています。ところが、「知らずに犯した罪」は、罪を罪とも思わず、自分は悪くないと省みることがありません。
この「知らずに犯した罪…」を自らに問うとき、私の本当の姿が 思い知らされるのかもしれまん。
※ここでの「老僧と若者の話」は、私がどこかの本で読んだ記憶をもとに書いたものですので、話の中身が歪んでいるかもしれません。どなたか、確かな出処をご存知の方がありましたら、お手数ながら、お知らせくだされば幸いです